『占拠された軍事基地』(ロクプラ018話)  突如、軍事基地から住宅街へ向けてミサイルが複数放たれた。 迎撃システムにより、被害は最小限に食い止められたが、それでも甚大な被害をもたらした。  ライト研究所、指令室。 「ライト博士!」 「うむ。ロックよ、これ以上被害が出ないうちに軍事基地へ出撃するのじゃ。 だが、今回はこれまでにないほど危険が伴うだろう。十分注意してな」 「はい!」  ロックマンの無事を心配するライト博士らを背に、ロックマンはミサイルを放った軍事基地へと向かった。 「ここか…」  いたるところに砲台が設置されており、重々しい要塞と化していた。 内部には小型ミサイルや戦車など数々の兵器が待ち受けていた。 「この奥に指示を出して兵器を操っている奴がいるはずだ」  数々の強力な兵器のトラップがロックマンを襲ってきたが、設置の仕方がワンパターンでそれほど 手こずるものではなかった。そしてロックマンは制御室へとたどり着いた。 「ここにここの基地を陣取っているボスがいるのか……」  用心しつつロックマンはシャッターをくぐり抜けた。 「……?!」  そこは兵器が詰め込まれたこのステージの重厚な雰囲気から一転し、メルヘンチックなパステルカラーで 彩られた巨大な一室だった。 「来たでちゅね」  その奥に高級な椅子に座っている小柄なロボットが見えた。 「ワイリーロボ……?」  しかしその姿はよちよち歩きが出来る1歳半くらいの姿をしていた。 (挿絵:tp://climbtorock.web.fc2.com/img-rock003/181230milkwoman.jpg) 「そうでちゅ。あたちの名前はミルクウーマンでちゅ」  ミルクウーマンと名乗る赤ちゃん型ロボットは哺乳瓶を飲みながら答えた。  まさか軍事基地から街を襲ってきた相手が赤ん坊だったとは。しかしロックマンは当初の目的を思い出し、 あっけにとられていた状態から怒りを示す表情に戻した。 「街を襲った罪、償ってもらうぞ!」  心を鬼にしてロックマンはミルクウーマンにバスターを向けた。  しかし……。 「ぶぇええええええ〜〜〜んんん!!!!!! 恐いでちゅぅぅうう〜〜〜!!!」  ミルクウーマンが突然大声をあげて泣き出した。 「あ、ゴメン……」  赤ちゃんに対しては言い過ぎだったかもしれないと、ロックマンは反射的に謝り、バスターを下げた。 「今でちゅ!」  ミルクウーマンは哺乳瓶をロックマンへ向け、武器をマシンガンに切り替え、猛連射を放った。  ズガガガガガガガ!!!!! 「うあああああー!!!!」  ロックマンはもろに直撃を受け、ダメージを食らった。 「ばぁぶばぶばぶー!!! ロックマンちょろいでちゅーー!」  飛び跳ねて喜ぶミルクウーマン。  よろけた体勢を立て直し、ロックマンは再びバスターを向けて怒りを顕わにした。 「くそぉ! 赤ちゃんだと思って油断した……。だけど、もう騙されないぞ!」  続けてマシンガンを放ってきたがロックマンはそれを避けつつバスターをチャージし始めた。 まだ躊躇いがあるのか、せめて苦しみを長引かせないように確実に一撃で機能停止させてやろうと フルチャージまで溜める事にした。  ヴィヴィヴィヴィヴィ…… 「お次はこれでちゅ!」  ミルクウーマンは事前に捕らえていた軍事基地にいたロボット数体にアンチエイジングビームを当て 思考回路を赤ちゃん化させて、ロックマンを襲うための準備をしていた。  ミルクウーマンの近くにあるシャッターから捕らわれていたロボット数体が部屋に入ってきた。 「!!!」 「バァブゥーッ!!!」  姿を現すなり早々、捕らわれていたロボット達が赤ちゃん言葉を叫びながらロックマンを襲い始めた。 「このロボット……操られているのか!」  攻撃を避けつつ、ロックマンは行方不明になっていたロボット達であることを確認した。 「ばぁぶばぶばぶばばばばー!!!!  あたちの下部のロボット達よ、ロックマンをボコボコにするでちゅよーーー!!!」 「バァブゥーッ!!!」 「ぐあー!!」  ミルクウーマンの指示の元、操られているロボット達はロックマンを襲いかかり、ロックマンは動きを封じられた。 「ばぁぶばぶばぶばばばばー!!!! 面白いでちゅー!!」  ミルクウーマンはゲーム感覚でコントローラを使ってロボット達を操り、攻撃を繰り出してきた。 「この調子で世界中をゲームのステージにして全部壊すでちゅよーーー!!! ばぁぶばぶばぶばばばばー!!!  あたちの即死コンボを食らうがいいでちゅーー!!!」  ロックマンはロボット達のコンビネーションによる猛攻撃を食らった。 「ぐあっ! がはっ! ぐごぉっ!!」 「手も足も出ないみたいでちゅねー! このままノックアウトまでボコったら、 ロックマンも哺乳瓶のアンチエイジングビームを食らわせて脳内を赤ちゃんにして操ってやるでちゅよー!」  ミルクウーマンはご機嫌状態ではしゃいでいた。だがロックマンはその言動の中で、ある情報に気がついた。 (そうか、あの哺乳瓶の能力で……)  ロックマンはペーパーマンから入手したペーパージャミンガーに武器チェンジし、操られているロボット達に当てた。  ビビビビビ…… 「今からは僕の指示通りに動いてもらうぞ!!」 「バァブゥーッ!!!」  より強い電波によるジャミングにより、操られているロボット達はロックマンの支配下となり、ミルクウーマンを 取り押さえようと迫っていった。 「ばぁぶ? あたちのコントローラが効かないでちゅ! ゲームが壊れたでちゅー!!」  ミルクウーマンはロボット達に押さえられ、哺乳瓶を奪われた。投げ出された哺乳瓶をロックマンがキャッチする。 「これがなければ君はもうロボット達を操ることは出来ないはずだ!」  ロックマンはロボット達にミルクウーマンを取り押さえるように指示した。 「バァブゥーッ!!!」  そしてミルクウーマンは椅子に縛りつけられる形となった。 「何するでちゅかー!! ぶぇええええええ〜〜〜んんん!!!!!! みんながあたちの事をイジメるでちゅー!!! 訴えてやるでちゅー!! 恐いでちゅぅぅうう〜〜〜!!!」 「パワーギアッ!!」  一撃で機能停止させるため、ロックマンはパワーギアを発動し、銃口をミルクウーマンに向け、チャージを開始する。 「かわいそうだけど君のやっていることを許すわけにはいかないんだッ!!」  ヴィヴィヴィヴィ…… 「いけぇえーーー!!!!」  青と赤の2つのチャージショットが放たれる。  ズドォオオオオオオオオオオーー!!!! 「もっとミルク飲みたかったでちゅのにぃぃいーーー!!!」  ドォォオオオオーーン!!!  ミルクウーマンは断末魔の叫び声を上げ、機能停止……  していなかった!! 「何ィッ!」 「赤ちゃんをやめるなでちゅ! 赤ちゃんのあたちには身を守る安全装置がいっぱいついてるんでちゅ!」  エアバッグのようなクッションに守られ、ミルクウーマンのダメージはいくらか軽減されていた。 しかし、残量エネルギーは哺乳瓶が奪われたため、補給する事が出来ずにいた。やがてある問題が起きた。 「アンチエイジングを続けるエネルギーがなくなってきたでちゅ。早く哺乳瓶に入っているアンチエイジングミルクを 飲まないとヤバいでちゅ」  ミルクウーマンはダメージを受けた身体の状態のまま、よちよち歩きでロックマンの方へ近づいた。 「……反省してもう悪いことしないでちゅから早く哺乳瓶を返すでちゅ!」 「哺乳瓶を返して欲しかったら今までしたことに対して素直に謝るんだ!」  しばしの沈黙の後……、 「いやでちゅぅぅぅううううううーー!!」  ミルクウーマンは床に寝転がってジタバタし、駄々をこね始めた。 「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだぁあ、でちゅぅぅうううーーー!!!!!」  そして、ついにミルクウーマンのアンチエイジングエネルギーが底を突いた! 「エネルギーがなくなるでちゅぅぅうううー!!! やだやだやだやだやだやだぁぁあああ、でちゅぅうううーーー!!!」  ミルクウーマンの身体が白い光に包まれ、赤ちゃんの姿から元の姿へと形が変化していく。  身体を覆っていたアーマーは破損し、身体全体が伸びてゆき、胸やお尻の膨らみが増し、 大人の女性と同様の悩ましい姿へと変化していく。 「……わっ!!!」  大人の女性の裸体を見慣れていないロックマンは思わず赤面してしまう。  やがて白い光が消え、姿が変化した女性の裸体がはっきりと見える状態となる。 「いやぁーっ! 何見てんのよ!」  咄嗟に股を閉じて胸と股の部分を手で覆い隠すミルクウーマン。顔も大人の女性のそれであり、白く美しくなっていた。 「あなたは……!!」  ロックマンはその顔に見覚えがあった。数か月前、各地の宝石店を襲って一兆ゼニー相当の宝石を盗み出し 逃走した強盗犯ロボット、トランスウーマン。大方、姿をくらます為に別の姿になっていたという所か。 「トランスウーマン!!」 「フッ、バレてしまったわね。ロックマン、この場は去るが、いずれ決着をつけてやるわ!!」  そう言ってミルクウーマンもといトランスウーマンはワープしてその場を去った。 「……」  ロックマンは哺乳瓶の内部から武器チップ『アンチエイジングビーム』を入手した。 ――――――――――――  こんばんは〜。今回はロクプラの続き18話を書きました。 ミルクウーマンはクラウンマンやラバーマン的な、かわいい系の 立ち位置のボスで、本人はお遊び感覚で暴れている感じです。 倒した後に元の姿のトランスウーマンという別のボスロボットになる展開はモスミーノスが途中で姿が変わる 展開を参考にしました。 トランスウーマンの話とデザイン絵はあとで書く予定です。