『研究所の悪夢』(ロクプラ017話)  ライト博士研究所。 「ただいま戻りました」 「ワォン!」 「ポヨン!」  ロックマン、ラッシュ、エディはシャッターを通って、ライト博士がいる指令室に入る。そこにはロールもいた。 「おかえりなさい!」 「おぉ、ロック!よく無事に戻ってきた」 「新しいE缶、持ってきたダスよ」 「サンキュー、ライトット」  ロックマンは椅子に腰かけ、ライトットが持ってきたE缶を飲んでひとまず体力を補充する。 その後は、メンテナンス用のベッドに横になり、ダメージを受けた際に出来た傷をライト博士が修理していく。 「今回も派手にやられたのぉう…」  キュィィィーン!  博士はロックマンの破損したパーツに、持ち替えた修理する為の道具を近づける。 それにしても先端がドリルのように尖っていて危険な感じがする。 「死ねぇええーーい、ルルォォーーーックーーーーッ!!!」  突如、ライト博士はロックマンの心臓部を目掛けてドリルを突き付けてきた。 「うあーっ!」  ロックマンは咄嗟に身の危険を感じ、ベッドから飛び起きた。 博士が突き付けてきたドリルはベッドを突き抜け、大穴を開けた。 「ちっ」 「ライト博士…、一体何を…?」  ライト博士がイキナリロックマンを破壊してこようとしてきた事にロックマンは驚きを隠せない。 まさかライト博士の姿をした偽物…? 「いやぁ〜、すまんすまん。ちょっと手元が狂ってしまったのじゃ。 この間導入した新しい機械じゃったからの」  ライトットが破壊されたベッドを見ると、 「新しいベッドを持ってきたダス」  気を利かせてロックマンに別のベッドを用意してきた。 「ありがとう、ライトット」  ロックマンが腰を下ろそうとした、その瞬間。  ジャキィィイーーン!  新たなベッドから無数の針が飛び出してきた。 「ひっ!!」  ロックマンは辛うじてそれを交わした。 「あ、ボタン、間違えたダス。惜しかったダスね。ヒヒッ」  これは罠か?  博士といい、ライトットといい、どうも、さっきっから、僕を安心させた瞬間に殺そうとしてきた、感じがする。 一体何が目的だ…? 「ロックマン、すまんダス。今度は大丈夫ダスから、ベッドに横になるダス」 「怪しい…」 「ん?どうしたダスか?」 「ロックよ、安心しなさい。今度は安全に修理するからのぉう」 「みんな、なんかおかしいよ」 「そんなことはないぞ。さぁ、ロール、ロックマンの腕をベッドに縛りつけなさい」 「はい、博士」  ロールが不敵な笑みを浮かべてロックマンにじりじりと歩み寄る。 「フフフ…」 「こわいよー」  ロックマンには研究所にいるみんなが敵に見えてきていた。 「禁断症状が出てきておる。ワシの言う事を聞けないロボットは一度頭脳を破壊し、1から作り直さなくては ならないのぉう」 「破壊するならワスのバズーカーを使うといいダス」  ベッドに腕を縛り付けられたロックマンは身動きが出来ずにいた。  ウィィンウィィンウィィン…。 「ライトットバズーカーのチャージ、完了ダス」 「ライトット、悪い子になったロックマンを粉々にしてしまいなさい!」 「言われなくてもそうするダス!!!! グッバイダス〜〜〜!!!」  ズドォォォオオオオオーーーー!!!!!!! 「やったダスか?」 「ついに我が不良息子が退治されたか」 「家庭用ロボットは最初から私一人で十分だったのよ」  煙が晴れた後に現れたのは粉々に…、 なっていないロックマンだった。 「!!!」 「特殊武器『ワープスラッシュ』を使ったのさ」  ライトットがバズーカを発射する寸前、ロックマンは離れた位置を攻撃できるワープスラッシュで バスーカーを切り裂いていたのだった。 「バカな…ダス!」  カラン…。 真っ二つに裂かれたバズーカが地面に落下。  同様にロックマンは自らを拘束している腕輪を破壊した。 「これでハッキリした。ライト博士、ロール、ライトットは明らかに僕を殺そうとしていたことがね…」 「はっはっはー。というサプライズパーティだったのじゃ。楽しんでもらえたかのぉ?我が息子よ」 「もうだまされるもんか!」 「ひどいわ、ロック。みんな、この日の為にドッキリイベントを準備してきたのに」 「そうダスよ、きっとロックマンは戦いばっかりで疲れて冗談すら受け入れられない思考になっているんダス」 「ところでロックや、新しい武器を開発したんじゃ。ちょっとこっちへ来てくれんか?」  呆れながらもロックマンは一体なんだろう、と、ライト博士に手招きされる方へと歩み寄った。 「真空…」 「?」 「竜巻旋風脚ーーーーーッ!!!」  するとライト博士が突然ロックマンの顔面目掛けて高速で連続回し蹴りを繰り出してきた。  ビシビシビシビシビシビシビシビシ…ッ!!! 「あだだだだだだだだ!!!!!」  容赦なく、ロックマンは大ダメージを食らって吹き飛んだ。 「実験成功〜ッ!」  真空竜巻旋風脚を終えたライト博士は華麗に着地し、決めポーズを取った。  ほぼ体力が尽きかけているロックマンは床から起き上がる事が出来ずにいた。 (もうみんな、僕をだましてばっかり…。 僕を壊す事しか考えていないんだ…。ライト博士、僕はもう必要のないロボットなのでしょうか…)  ロックマンがふと天井を見上げると、見慣れないロボットが目に入った。 (あれは…!)  そのロボットと目線が合う。 「まさかアイツが元凶…?」 「フッ、バレたか。バレちゃ仕方ない」  天井に張り付いていたロボットが天井を離れて空中を漂った。身軽で質量を感じない動きをしている。 (挿絵:tp://climbtorock.web.fc2.com/img-rock003/181215paperman.jpg) 「私の名はペーパーマン。いかにも、Dr.ライト、ロール、ライトットを操り、お主を破壊せしめんとしたのはこの私だ」 「そうか…」 「ペーパーマン様、最後は私にお任せを。私のハイパーロールバスターでトドメをさしてあげるわ」  ヴィヴィヴィヴィヴィ…。  ロールのバスターがチャージ完了する前にロックマンは特殊武器『ワームホールカッター』を使い、 ペーパーマンの目の前の空間に穴を出現させ、カッターでペーパーマンを一刀両断した。  ザシュ…。 「な…!」 「まるでザコだな…」  紙で出来ているせいか、耐久力はどの雑魚よりも劣っていた。 「ぬかった…」  そのままペーパーマンは機能停止した。  そして…。 「ワシは一体…」 「ここはどこダスか?」 「私ったら、いつの間にバスターを…」 「みんな、元に戻ったんだね…」  ほっと一息ついたロックマンはその場で倒れた。  バタッ…!  数分後。 「ロック…」  正気に戻ったライト博士、ロール、ライトットにより、ロックマンの損傷個所は修理された。 「ライト博士、みんな…」 「ロックよ、ワシは操られていたとはいえ、自分の息子にとんでもない事をしてしまった…」 「私も博士と一緒にいながら守ってやれなかった…」 「ワスとしたことが…、およよ…、ダス」  操られていた事を詫びるライト博士、ロール、ライトット。 「いいんですよ、みんなが無事に元に戻れたんなら…。最初は驚きましたけど、電波を使って操って来るワイリーロボが 悪いだけです…」  ロックマンはこれまでにライト博士、ロール、ライトットたちから受け取ってきた、日々の日常にある 気遣いや優しさから伝わる暖かさをかげがえのない幸せとして感じ取り、感謝していた。 今までロックマンがライト一家から受け取った事に比べたら、今回の被害など、ロックマンにとっては 大したことではなかった。  たしかに今回、ライト一家から受けたダメージは相当なものだったが、揺るがない信頼関係を築いていた 彼は、ライト一家が、本心でそんなことをするはずがない、とずっと信じていた。  だから今回の件では、ロックマンはすんなりとライト博士たちを許したのだった。 「ロックよ、こんなワシらを許してくれるのか?そして自らの危険を顧みずにワシらのことまでも助けてくれた。 なんとお礼を言ったらいいか、ありがとう、ロック、本当にありがとう…!!」 「ロック〜〜!」 「ダス〜〜〜!!」  4人は抱き合って、取り戻せた平和の喜びをかみしめた。  もとより、ロックマンは精神年齢が人間の年齢で言う10歳程度に設定されているため、 深く悩み続けたりすることもなく、ライト博士の言う事は素直に受け入れる、ようにプログラムされている。  しかし、その純粋さが仇となる事件が起ころうとしている事を今の彼は知る由もなかった。 -----  こんばんは〜。ロクプラ17話を書きました。 今回はゲームに出なさそうな意外性のある展開のステージを書いてみました。 こういう普段の日常にある舞台が恐怖に変わる展開はけっこう恐いんじゃないかと思います。 11ではライト研究所にワイリーが押しかけてきたり、モニターをジャックされたり、結構セキュリティが 甘い感じがしました。 ダイナモやハヌマシーンなど、思い返せば他シリーズにも基地が戦場になる展開はありましたね。 ペーパーマンはデスノートから思いついたネタでしたが耐久力がザコ以下なのが難点です。