短編『銀行強盗を捕まえた後、ついネコババをしてしまったロック』の巻  カトルオックス島でボーンメカ『テオドール・ブルーノ』を倒した後…。 ロックが市庁舎に寄付したお金により復興した銀行に強盗が押し入り、1兆ゼニーを奪って 市街地で逃走するという事件が起きた。  フラッター号にあるTVを見て、事件を知ったロックはすぐさまセントラルタウンまで駆けつけ、 パトカーが追っている逃走中の強盗犯の車を止める手助けをした。  車が破壊され、中からトランクと、犯人と思われるコブン2人が飛び出してきた。 「このトランクが取られたっていうお金だな」  ロックは現金が入ったトランクを手に入れた! (よし、あとはこのトランクを警部に渡せばミッション完了だ)  警部の方へ足を運ばせようと思った瞬間、よからぬ考えが頭をよぎった。 (トランクに入っているだけあって、中には大金が入っているんだろうなぁ…。 そういえば、僕の特殊武器の開発費用や、パーツやアイテムの購入に結構お金がかかるよなぁ…。 これだけの大金があれば、他にもいろんな事が出来そうだなぁ…)  そこでロックは頭を振る。 (ダメだ、ダメだ。これまで何度も街の危機を救ってきた少年のヒーローとニュースで報道されているのに、 僕がこんな事を考えていては…。早く警部にトランクを渡して事件を解決させよう)  そこでロックは辺りを見回した。  パトカーとの危険なカーチェイスをしていた後のせいか、やじうまで集まっていた人も含め、 周りに人がいなくなっている。警部もパトカーの中で何かをしている様子だった。  ひょっとして誰にも見られていない今なら、トランクのお金を持ち出しても気づかれないのではないか? そうだ、カーチェイスの後の爆発でトランクごとふっとんだっていう事にしてしまえばいいんだ。 それにこんな大金、ちょっとやそっとのディグアウトじゃ集まらない。さらに険しいダンジョンに進むためにも、 そして自分のためにも、これから大金が必要になる。良心が痛むけど、僕は正義の味方でもなんでもない、 ただの人間だ。悪い事もしなきゃ。大丈夫、バレなきゃいいんだ。表向きでは僕は正義の味方だ。 誰も僕を疑うもんか。  辺りに人がいない事を再度確認して、ロックは大金が入ったトランクを持ち出す事を決意した。 (今のうちにゲートをくぐって持ち去ろう)  トランクを抱え、ゲートをくぐろうとしたその瞬間。 「ネコババしてるでやんすーーーーーーーーーーーー!!!!!」  どこから見ていたのか、遠くから少年が現れ、ロックの方を指さして叫び声を上げた。 よく見れば、その少年は悪ガキ3人組の一人、ベンスリーだった。 (ヤバイ…、見られてたのか…!)  ここで誤解だという事にしておかないと、後で大変な事になる。ロックはベンスリーの元へ行って弁解し始めた。 「や、やだなぁ…、ネコババだなんて。トランクを持ったままちょっと行き先を間違えただけだよ…、ハハハ」 「ホントでやんすか?なんか辺りを見回した後こっそりした足取りで警部に気づかれないうちに街から 出るゲートをくぐろうとしていたように見えたでやんすが…」 「そ、そんな事するわけないじゃないか〜。やだなぁ…、ハハハ。それにこのトランクの中のお金は 車の爆発に巻き込まれて跡形もなく燃えちゃったんだよ」  とっさにさっき思いついた偽りの情報をベンスリーに伝えた。 「え、燃えちゃったでやんすか?それはもったいないでやんすね…。でもホントかどうか確認したいから トランクの中を開けて見せてほしいでやんす」 「そ、それは、警官の人がやる仕事だよ。勝手にトランクの中を調べたりしたらいけないよ」 「そういや、よく考えたらトランクだけ無傷ってのもおかしいでやんすね。警部以外が開けちゃいけないなら、 なんで青い少年が知っているでやんすか?それに少年の身体の色がこの前見かけた時より黒くなっている 気がするでやんすが」 「えっ?!」  ロックは自分で見れる範囲で自分の身体を見ると、たしかに元の青から黒に変わっていた。 きっと爆発した車の近くにいた影響で黒くなったに違いない、とその時のロックは思っていた。 「爆発した車の煙の影響かなぁ…」  その瞬間、ベンスリーがロックが手にしているトランクに手をかけてきた。 「よこすでやんす!本当にネコババする気がなかったのか、確かめるでやんす!」 「わわわ!」  思わずトランクをベンスリーに渡してしまいそうになった。 「ダ、ダメだよ、これは大事な証拠品なんだから!」  負けじとロックもトランクを持つ手を引き寄せる。  グググ…! 「あ、UFO!」  ロックは空に向けて指を指した。 「え?どこでやんすか?」  ベンスリーはロックが指す空の方を見上げた。 (よし、今のうちだっ!)  ロックはトランクを開け、中にある1兆ゼニーをバキュームアームで全て吸い込んだ。 「あ、だましたでやんすね!UFOなんているわけないじゃないでやんすか!」  目線を戻したベンスリーは、トランクが開かれ、中が空になっているのを目にする。 「あ、ホントに空になっているでやんす!!」 「言った通りだろう〜?」  そう言った瞬間、ロックは身体がさっきよりさらに黒くなった感じがした。どこか身体の調子でも 悪くなったのかもしれない、とロックは思った。 「でも、さっきオイラが空を見ていた時になんか掃除機みたいな音が聞こえたでやんすが…」  ベンスリーはロックの腕を見た。 「この腕が怪しいでやんす!!!」 (鋭いな…)  今度はベンスリーがロックのバキュームアームを手にかけてきた。 「これはディグアウトの時に使う、特殊武器だよ。引っ張ったら危ないよ」 「怪しすぎるでやんす!!」  なおも腕を引っ張る力を強めるベンスリー。 「や、やめろって。うああああ〜!!」  ガシッ!!!  ロックが転んでバキュームアームが地面に叩きつけられた瞬間、中に入っている1兆ゼニーの 札束が飛び出てきた。 「うあぁああーー!!」 「や、やっぱり、コイツ、オイラを騙していたでやんす!!!」  バレてしまった。今まで正義のヒーローの少年と報じられていた僕の体裁が…。  そこでロックは覚悟を決め、人相を変えた。 「チッ、バレちゃ、仕方ねえな」 「うあ、口調が今までの青い少年のと変わったでやんす!それにもう身体が真っ黒で別人みたいでやんす! やっぱり少年はワルい人だったんでやんすね!そういや、いつかゴミ箱からお金をあさっているのを見かけたし、 街を救うヒーローというのは仮の姿で、ホントは島の宝を独り占めしようと企んでいる極悪人だったんでやんす!!!」  その時、強風が吹いてき、1兆ゼニーの札束が空遠くへ舞い上がった。 「「あッ!!!」」  ロックとベンスリーはこれに瞬時に反応し、散らばっていく札束を全速力で追いかけた。 「1兆ゼニーはオレのものだぁーッ!!!」 「オイラのものでやんすーーッ!!!」  ヤスの草原。 「たき火でお芋、おいしいのぉ〜う」  一人の老人がたき火をして焼き芋を食べていた。  そこにロックとベンスリーが駆けつける。 「すいません、おじいさん。ここに何か飛んできませんでしたか?」 「いやぁ〜?ワシはここでずっとお芋食べてたから何も見てないのぉう」  たき火をしている火の辺りを目にすると、札束が数枚燃えていた。 「あッ!!!オレの1兆ゼニーが…」 「オイラの札束がぁ〜ッ!!」  涙目になるロックとベンスリー。 「さつま芋の束ならあるぞい」  気のいい老人は二人にさつま芋を分けた。  もぐもぐ…。 「おいしいかのぉう?」 「おいしいです〜〜」 「でやんす〜」  二人は涙を流しながらさつま芋を食べた。  そこへ悪ガキ3人組の残りのジム、オッシュがやってきた。 「おう、お前らか」 「いいもん見つけてきたぜ〜」  ジムの手には約1兆ゼニーの札束が握られていた。 「札束、全部燃えたわけじゃなかったでやんすね!」  ベンスリーは希望を取り戻し、笑顔になった。  そこでロックは、 「そのお金は元々、銀行強盗が奪ったお金だよ。やっぱり警察に届けなきゃ」  身体は黒いままだが、口調は元のロックに戻っていた。 「そうか、オレたちが見つけたんで大喜びしたんだがよぉ〜…。そういう事なら仕方ねえな」  ジムは約1兆ゼニーを警察に渡す事を決意したようだった。 「それじゃあ、僕が代わりに届けに行ってあげるよ。警官の方とは顔馴染みだしね」 「そうか、わりいな。では、頼んだぞ」  ジムはロックに約1兆ゼニーの札束を渡した。 「じゃ、オレたちはこれで帰るわ。なんか久々にいい事したって感じだな」 「またな、青い少年」 「さよならでやんす…」  ジム、オッシュ、ベンスリーの3人は自分らのアジトへと帰っていった。  3人が遠ざかったことを確認したロックは…、 「フハハハハハハ!!!!まんまと約1兆ゼニーを取り戻せたぜ。青い身体の頃の口調の演技が上手くいったな。 悪ガキ3人組など、ちょろいもんだ」  なんと、身体が黒いロックのさっきの元に戻った口調は演技で、ダークに変貌した中身は変わっていなかった。  悪ガキ3人組のアジト。 「ガハハハハハハ!!!あの、青い、いや、黒い野郎、まんまと引っかかりやがったぜ!オレたちが渡したお金が ニセサツだとも知らずになあ〜」 「さすが、親分。見事な作戦ッス」 「信じてたでやんす!!」  ジムとオッシュは草原で拾った札束を自分らの物とし、コンビニでカラーコピーしたニセ札をロックに 渡していたのであった。 悪ガキ3人組は手元にある本物の約1兆ゼニーの札束を数枚手に取って、悦に入る。 「これはオレたちのもんでやんす〜」 「ガハハハハ〜〜。一生無駄使いしながら暮らせるぜ〜い」 「いい眺めだぜ〜。んあ?」  その時、オッシュが透かし部分が透けて見えない事に気づいた。 「これ、偽札じゃないっすか?」 「え?」 「マヂでやんすか?」  慌てて3人が確認するが、全て透かし部分が透けなかった。 「グワアアア〜〜〜!!あの青い少年に間違えて本物を渡してしまっターーーーーー!!」  一方、ロックは…。 「あれ、これ、透けない。偽札だ…」  ロックが受け取った約1兆ゼニーも偽札なのであった。  ヤスの草原。焼き芋を焼いていた老人。 「フッ。愚かな、少年と悪ガキどもよ…」  老人は変装していた服を脱ぎ取った。その正体はなんと警部であった。  ロックがトランクを持ち出そうとした時から、 全ての会話の内容を聞いていた警部はロックと悪ガキ3人組のアジトの元に向かい、 「こういう者ですが」  警察手帳を見せ、即座に逮捕した。 実はヤスの草原に散らばっていた1兆ゼニーは偽札で、警官が本物の1兆ゼニーを回収した後、 誰がトランクの中をばらまいたのかを確かめるため、試したテストだったのだ。 「うあああ〜〜、ロールちゃんに説教されるうぅう〜〜〜」 「警部さんの罠にまんまと引っ掛かってしまったでやんす〜〜〜」 --- こんばんは〜。今回はDASH1の銀行強盗のサブイベントを元にした 小説を書きました。 多少アレンジをしてお金を非現実的な額にしました(汗)。 ゲームではダークロックになってもデモシーンのセリフは同じでしたが、 今回は口調が変わっているシチュも入れました。 DASH1は思わずやりたくなるワクワクする内容の 幅広いサブイベントがよかったです。