『新たなる刺客』(ロクプラ015話)  Dr.ワイリーが送り出してきた新たな戦闘ロボット、 ワープマン、バキュームマンに辛くも勝利したロックマン。  そして休む間もなく、市街地でフォルテが発砲するという事件が発生した。 フォルテを止めるため、さっそく街へと向かったロックマンだったが…。 「来たな、ロックマン!」 「今すぐ攻撃をやめるんだ!」  ズドッ!  ラッシュジェットで市街地に到着し、フォルテの姿を捉えたロックマンは すぐさまロックバスターで攻撃を放った。 「スピードギア!…ファッハハハ、進化したオレのスピードについてこれるか!」  フォルテは普段の倍以上の速さでダッシュし、攻撃をかわした。 街の人々は既に避難済みであり、かわされた攻撃は建物に直撃した。 フォルテのこの異常なスピードの動きにロックマンは覚えがあった。 「は、はやい!ギアシステムを組み込んだのか!」  以前、ワイリーとの戦いで使用したダブルギアシステム。 大学時代のライト博士とDr.ワイリーが開発中に袂を分かつきっかけにもなった システムである。普段の倍以上のパワーまたはスピードを引き出す事が出来るが、 同時にこれを装着したロボットの身体に大きな負荷がかかるという危険性を孕んでいた。 「次はこっちからいくぞ、パワー…」  続いてフォルテは攻撃を仕掛ける為、パワーギアへとギアチェンジを試みるが…、 バスターに変形中の片腕から煙が出始めた。 「ちっ、オーバーヒートか…」  肩を手で押さえて動きを止めるフォルテ。 「ギアシステムには使用制限があるんだ。悪いけどこのまま足止めさせてもらうよ!」  ヴィヴィヴィ…  ロックマンはこの隙を逃さず、地面に着地すると同時にエネルギーをチャージし、水色に光り輝く バスターの銃口をフォルテに向ける。  ズドォォオオオオオ!!!!!! 「く…ッ!」  ロックマンが放ったチャージショットがフォルテに命中したかと思いきや…、 「なッ!! 消えたッ?!」  突如、フォルテの目の前の空間に2メートル程の大きな穴が開き、チャージショットは その空間の中に吸い込まれた。  直後、穴が開いた空間の近くで、もう一つ別の空間の穴が開いた。 「…フッ、どうやら間に合ったようだな」  そしてその穴から見たことのないロボットが現れた。 そのロボットはロックマンやフォルテの身体よりも大きなサイズの黄色いカッターを胴体とし、 それに頭部、両腕、両脚がついており、その各部にも巨大なカッターがついていた。 (挿絵:tp://climbtorock.web.fc2.com/img-rock003/181202cutterman.jpg) 「誰だッ!!!」  明らかにロックマンと敵対する存在。その相手にロックマンは銃口を向けた。 鋭い目つきにある赤い瞳がロックマンへ向く。 「ワイリーナンバーα+003、カッターマン」 「カッターマン…!」  名乗りあげた名前を復唱する。 「またジジィが別のガラクタを…。オレの戦いの邪魔を、する、な…!」  オーバーヒートを起こしながらも闘志を失っていないフォルテはカッターマンを睨みつけ、 前に出ようとする。 「ワイリー様の命令だ、退却してもらう」 「ふざ…けるな!戦いの勝負はまだついていない…!」 「貴様、研究所にあるギアシステムを無断で持ち出して適当に取り付けただろ!  アレをまともに使いこなすには貴様の身体の一部を改造してから取り付ける必要がある。  今のお前ではオーバーヒートを起こしたまままともに戦えんぞ!」 「うるさい!オレに指図するな…ッ!」 「ええい、分からず屋めがッ!」  カッターマンは腕のカッターで再度、空間に穴を開けてその中にフォルテを蹴り飛ばした。  ドスッ! 「ぐあーーっ!」  フォルテは穴の中に消えた。数秒後、カッターマンが開けた空間の穴は全て閉じられた。 「…これで邪魔者はいなくなった」 「…!!」  カッターマンはロックマンの方へ身体を向けた。 「ワイリーナンバーズは僕が倒す!」 「やれるか? オレのカッターで豆腐のように角切りして麻婆豆腐にしてやんよ!」  ロックマンとカッターマンの戦闘が始まった。 (街の人々は既に避難済みだ。だけど、無闇に建物を破壊するわけにもいかない。 短期決戦で行くぞ…!) 「やあああああッ!!!」  カッターマンの姿を捉え、バスターを放つ。 「フッ、バカが」  カッターマンは腕のカッターで目の前にさきほどと同様に空間に2mほどの穴を開ける。 ロックバスターはそこに吸い込まれた。 「あっ!」 「俺様の能力でお前の攻撃なんか余裕だっつーの」 「くそ…!」 (やつに攻撃を当てるためにはまともにバスターを撃つだけじゃダメか…。 何かフェントでも仕掛けないと…) 「ほな、次はこっちからいくで…!」  カッターマンはロックマンの周りをダッシュで移動し、次々と空間に穴を開けていく。 「ソラソラソラソラソラぁああーーー!!!」  続いていくつか開けた穴のうちのカッターマンの傍にある穴の中へ腕から放つカッターを何本か飛ばす。 カッターが穴の中に消えたかと思いきや…、 「うあっ!」  ロックマンのすぐ左隣に空いている穴からカッターが飛び出してきた。それをかろうじてかわす。 「ッハッハッハーー!!オレ様が開けた穴は他の穴と繋げる事ができるんよ。 ワームホールってやつ〜?  貴様にはこんな芸当できねえだろ〜?俺様、最強〜!」 「なんてやつだ…!」 「ついでにいいこと教えてやんよ。お前が倒したワープマンは瞬間移動、バキュームマンは ブラックホール、と、今回のワイリーナンバーズにはワイリー様が盗み出した異星人の技術が 組み込まれているんだぁよぉ〜。 地球の技術で戦うお前らなんかに勝ち目はないっつーの!ソラソラソラァーッ!!」  さきほどと同様にカッターを穴に向けて放つ。 「次はどこから飛び出すかなあ〜?」 「…!!」  カッターが出てくる場所を見破る事に神経を集中させるロックマン。 「ぐあああーーー!!!!」  ロックマンの背後にある穴から飛び出したカッター数本がもろにロックマンを刻み付け、 ダメージを与えた。  ガク…。 「ぐ…ッ!」  あまりの強烈な痛みに足を崩す。 「もう終わりか。案外あっけないのな、ロックマンさんよ」 (僕は…、ここで負けるのか…!このままワイリーロボのいいようにされてしまうのか…!)    その頃。ライト博士研究所。 市街地の防犯カメラから映し出されたロックマンの姿が研究所の巨大モニターに映る。 「ロック…!」 「なんてことだ!」  ロックマンを見守るロールとライト博士が声をあげた。 「ワイリーめ、宇宙探査機をハッキングし盗み出した地球外文明の技術で挑んでくるとは…!」 「博士!このままではロックがやられちゃう!  私もロックの所へ戦いに行きます!」  以前、マーヴルヒーローズとの戦いでロールバスターを使用した経験があるロールはロックマンを 助けに行くために行動を起こそうとした。 「待つんじゃロール!今のお前ではあのワイリーロボの攻撃に打ち勝つことは難しい…」 「そんな…!」  博士の言うとおりロールの力だけではロックマンを助けに行く事が出来ないと認識し、落ち込む。 「こうなれば以前ロックに組み込んだギアシステムを再び使用するしか手はないか…!」  以前の戦いで使用したギアシステムを多用する事はロックマンの負担になってよくないと思い、戦闘終了後に 使用にロックをかけるプログラムを施していた。 「ロックが再びギアシステムを使用するには、このギアシステム使用制限解除チップを差し込み、 インストールする必要がある」 「それで、ロックがカッターマンの攻撃を打ち破る事が出来るんですね!」 「打ち破れるかどうかはロック次第じゃが、とにかくこのチップをロックへ届ける事が先決じゃ!」  近くにいたエディが現れる。 「ボクにお任せポヨン!」 「ああ、頼んだぞ、エディ」  ライト博士がエディにギアシステム使用制限解除チップを渡した。  市街地。  カッターマンの攻撃を食らって倒れているロックマンは微動だにしていない。 「さて、いたぶるのも飽きたし、そろそろトドメでも刺してやるか」  余裕をこいているカッターマンがロックマンに腕のカッターを向ける。  研究所。 「しまった、間に合わないか!」 「ロック!立って!!」  モニターでロールが通信機に向かって叫ぶ。  市街地。 「うぅ…、身体が動かない…」  ピュルリ〜ララ〜♪  その時、聞き覚えのある口笛が近くから聞こえた。 「スピードギア!ブルースストライクッ!!」  ズドォォオッ!! --- 今まで4コマで描いてきたロクプラですが、4コマでは描くスペースが狭いのと、手間がかかるという理由で、 今回から小説で書くことにしました。 目標は自分が追い求めるロックマン最新作の姿を小説にて完全再現することです。  今回はカッターマンが新たなボスとして登場し、フォルテの他に、この後で黄色いスカーフのキャラも登場する予定です。 小説ではゲームをプレイしている雰囲気も出したかったので楽しさが出ていてよかったです。 あとは穴から出るという意味ではゼロ3のビブリーオを思い出しました。 キャラの性格は設定絵を思い浮かべて話を書きながら考えましたがそんな感じのタイプですね。